窪美澄『私は女になりたい』

人の縁とは事故のようなものだ。

 

恋ってすごいエネルギーだなと、改めて思い知らされる一冊。

恋をするのには余裕がいることを口実に別れを切り出す奈美だけど、一方で、この恋を手放すにはあまりにつらく、のちのち苦しむことも分かっている。でも、別れる。

…恋愛って難しい。どういう道を選んでも、これが正解、というものがないんだろう。ずっと一緒にいたい人がいて、その人と一緒にいられなくなるかもしれない、というような事態が発生したとき、その人の前から消えても、一緒に(その先が地獄だったとしても)逃げても、どっちが良い、マシ、というものはないかもしれない。

 

希望が見える終わり方でよかった。

それから、箕浦さん、柳下さんと、奈美に一貫した女性の味方がいたというのが、すごく救われた。

 

窪美澄さんは、人生の難しさ、ままならなさを示したうえで、そのこと自体がいとしいんだよと、やさしく発信しつづけている作家さんだと思う。

 

2020/09/21読了

 

窪美澄私は女になりたい』(講談社