宮本輝 吉本ばなな『人生の道しるべ』

宮本輝さんは『錦繍』、吉本ばななさんは『デッドエンドの思い出』が大好きで、そのお二人の対談集があると知って手に取ったら、もう、大当たり。

お二人の人生についての言葉の深みに、ただただ感動した。

こういう、あたたかい気持ちで小説を書いている、と知ることができ、うれしかった。

これからも読んでいきたい作家さん。

 

(宮本さん)

・現実世界は、理不尽で大変なことばかりだからこそ、せめて小説の世界では、心根のきれいな人々を書きたい。(P11)

・人はつい、ご健康をお祈りしますとか、今年がいい年になるよう祈っていますとか、年齢がいけばいくほど儀礼的な言葉を他人に向けるでしょう。年賀状などそればっかりやん。でも実際に相手を思って、今年もこの人には健康でいてもらいたいと、心から祈れる人がどれほどいるか。しかしながら、個別の宗教観を離れて、この人には幸せになってもらいたいとどこかで本気で思っていなければ、人の心を動かすことなんてできません。(P62)

・古い言い方をすれば、男と女くらい相性が左右するものはありません。相性とは理屈で説明できず、合うか合わないかしかない。だから相性が合わないとわかったら、それはもう破綻。別れたほうがいいんです。(P84)

(吉本さん)

・私の勝手な想像なのですが、小説を書く人には多かれ少なかれ、ものすごく繊細なところと、誰が何と言おうとずばっといく豪胆なところ、極端に離れた要素があると思うんです。(P116 )

 

2020/09/27読了

 

宮本輝 吉本ばなな『人生の道しるべ』(集英社